読切:腐討相固敬美
(投稿者:怨是)
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単発作品 怨是
埠頭倉庫警備
「……はァ、今日の売り上げだらしねぇな」
アルトメリア連邦はイーグルランド州、とあるダウンタウンの大通りの一角に、溜め息が浸透する。
三つ編みの赤毛をひとしきり弄り回した後、そばかすだらけの頬を両手で挟む。
シートの上に山積みになった本を、また持ち帰らねばならない。
――このオロヴェには、夢がある。このオロヴェには、自分の世界がある。
自分の世界を、そしてロマンを人々に広め、そして巨大害虫に怯える日々を過ごす淑女達に明日への活力を与えるのが何よりもの夢だった。
ただしここで彼女の云う所の“淑女”とは……
「男同士の恋愛に抵抗感の無い人って、中々居ないのかな」
男同士で行為、その中からありとあらゆる魂の繋がりを見出す事のできる女性を指していたのだ。彼女は。
生物に性別が与えられて以来、異性間の恋愛というものはありふれた物となって久しいが、行き着く先には生殖行為の末の子孫繁栄に“愛”だの何だのという服を着せただけだ。
だがそこに敢えて同性での恋愛を論じる場合はどうか。
子孫を残すという目的に帰結しないし、そも、男に男が情熱を抱くという考え方自体が広く知られていない。
云わばフロンティアだった。まだ見ぬ恋愛の地平線から“真実の愛”を見出すのである。
その中であれば、性別など瑣末な壁に過ぎない。
世の中に溢れ返った“だらしねぇ恋”に喝を入れ、人々に真実の愛を説き、そして“歪みねぇ愛”へと導くのはいったいいつの日になるのだろうか。
MAID特有のこの服装――とはいえ自分の服は作業MAID用なのか、かなり地味な部類だが――のせいだろうか。通りがかった人々の多くは「何だ、出稼ぎか?」と哀れみつつも訝しむ表情を向けてきた。
一部の男は、こちらが女であるというだけで声をかけてきたし、よしんば本に目を通したとしてもその内容に顔をしかめて立ち去ってしまう。
そして女は色々忙しいのか、こちらを一瞥するだけで、やはり立ち止まって本を読もうなどという者は居なかった。
嗚呼、我らが主よ。救いは無...
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