黒い大樹‐1940‐ 3
黒という色は二面性を持つ。
紫等とあわせて格式の高い色でも知られるが、それと同時に、相手を威圧する自己防衛の
色でもある。相手を威圧し、遠ざけるという事は力の象徴でもあれば、臆病者の常套手段
でもある。また、暗色の最高峰として、身を隠すための色でもある。
戦士として物心つく前から共にあるこの全身鎧も、畏怖の対象であればまた、己の孤独の
象徴であるのだろうという事ぐらいはタワー自身も認識していた。
「……!」
物言わぬ突進と同時に、前方に構えた大盾が迫るワモンを軽々と押しつぶしてゆく。
この重量とMAIDの強化能力を持ってすれば、盾さえも有力な兵器になる。
タワーに迷いがない、と言うことはなかった。
単純に鉄仮面の上では感情の表現のしようがないだけで、一応これでも立派に焦っている
つもりではいた。
少なくとも、自分の役目を果たすことと、敵を駆逐する事においては。
ビッグ・ベンの最大の特徴でもある先端の戦車砲も、この状況下においては撃つに撃てな
いのだ。
この数を相手にするのであれば、撃つだけ撃ってさっさと敵を殲滅する事ができれば御の
字なのだが、今回ばかりはそうもいかない。
その事が、今のタワーの焦りの原因にもなっていた。
砲撃体制をとって発射しようにも、そうしている間に「G」に押しつぶされてしまうのが
関の山である。
それに、これだけ敵が多く、周囲の確認もままならないようであれば誤射の危険性も充分
にありえるのだ。威力が馬鹿にならない以上、下手に斜線上を警戒せずに撃ってしまえば
反対にこちらの不利をさらに招く結果になってしまう。
タワーの持つ「ビッグ・ベン」の目的である「戦車砲の威力」というものは、実を言って
しまえば名ばかりのものである。
MAIDにおける戦車級の攻撃力を実現させる、というのはほんの初期の段階の構想であ
って、実際のところはただただ火力を追求した兵器であった。
またそれに即して、ビッグ・ベン自身も通常の方とは全く違った火器管制システムを持っ
ている。
そもそも、単純にMAIDに戦車砲を撃たせればそのままの砲台を担がせてしまえばいい
話であるし、そん...
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