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アマレット
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「アマレット」
約束があった訳じゃない。
そんなもの一度もした事は無い
する必要も感じない
ただ、彼女には
彼が来るだろうという予感だけがあった。
手首の時計は日付が変わろうとしている事を静かに、だが悲しいほど正確に主張しているが
だからどうした と彼女は思う。
だから、それで。そんなことで
彼女の予感が不安へ変わる事はなかった。
そして、それは確かに正しかったのだ。
/ * /
その日のクエルクスは、ドアを開けたときに空気の層が変わるのが聞こえるほど静かだった。
勿論そのままの意味ではない。それは彼がそう感じたに過ぎない。
深夜であるが客はいるし、リンネのピアノは静かに彼の耳を心地よく撫でる。
ただ、酒を飲んで赤くなったり青くなったりする者は無く
室内の空気が深夜の酒場独特のベタ付きを見せていないせいだろう。
その空気は深い青。光の薄い深海を想わせるような静謐さと心地よさにみちていた。
「いらっしゃいませ。かくたさま。」アルバが静かに言い、店の隅のブース席へそっと視線を向ける。
視線の先をみて、静かに頷くかくた。アルバに「ありがとう」と言い
約束をしていない約束の相手の元へと、ためらいなく足を運んだ。
「あと15分遅れてたら帰っていたわ。」深海のお姫様は頬を膨らませながら言う。
その様子が余りにも可愛いので、思わず頬を緩ませるかくた。
「次からは気をつけるよ」と微笑みながらも、申し訳なさそうな声で言うと彼女の横に座った。
その言葉にお姫様は。坂下真砂は彼以外には見せた事も無いであろう、えへへーな感じの子供っぽい無邪気な笑顔で返した。
/ * /
少しだ...
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